2020.05.18

愛のあるりんごを、これまでも。これからも。次世代の鹿角りんご農家座談会(後編)

鹿角りんごの歴史が始まったのは明治以降。とはいえ、佐藤要之助氏が鹿角でりんご園を始めてから、すでに134年が経つ。鹿角で愛され続けている「りんご」について、鹿角の若手農家たちはどう思い、これからどうしていこうと考えているのだろうか。──ということで、今を輝く7名の若手りんご農家たちによる座談会、開催!

前編はコチラ

男性と女性の役割は違っているけど、
りんご栽培にはどちらの役割も必要。

──これからの鹿角の果樹産業を考えると、女性の役割が求められているのではと思います。女性農業者の方がそれをどう感じているのか。そして、男性農業者はその辺りをどう捉えているのかお聞きしたいです。
上野 僕は基本、働いている場では男女という区別はないと考えています。業務内容で分けることはあっても、特別分けてはいません。それよりも、雇用している人全員のレベルをアップさせることが効率化につながるので、男女関係なく、雇用した側が「ものを教える」という技術を持っているべきかなと。いくらりんごを作る高い技術を持っていても、教える技術がなければ受け継ぐことができないから。
兎澤 うちはずっと長く働いてくれているスタッフがいます。作業としては、ひとつの作業を長くやることが多いので、そのスタッフが新しいひとに教えて、それを繰り返すことで覚えてもらっています。見ていると、女性は同じ作業をずっと黙々とやってくれるなと思いますね。自分は同じ作業だとすぐに飽きてしまう(笑)。
上田 それはあると思います。女性の方が、細かい作業をずっと長い時間やることに向いているかもしれません。男性は同じ作業を長くは続けられないように思います。
上野 それ、うちの親父だ(笑)。摘果しているなと思ったら、草刈りしてたりする。なかには、男性でも黙々と作業するのが好きな人もいるけどね。
池田 うちも親父の作業は早いなぁって思うけど、よく見ると「あれ、雑?」って思うことも。時間の使い方を考えてのことだと思うけど、女性は細かいところを丁寧にやってくれるなと思いますね。
佐藤 鹿角で暮らす人たちのなかで、働く場所の選択肢として「果樹農業」が入るようになればいいなと思います。そうなったときに、女性は環境を整えることに長けているから、女性がいることで畑がきれいに保てるんじゃないかと。女性の働き手があるっていいことだと思ってます。女性からして、男性に対して「ちょっとそれ違うんじゃない?」ってことはない?
上田 剪定のときに「え、そこ切っちゃうの?」って思うことはあります。待てばいいのになぁ~って。
中村 大きい枝を切ろうとしたら「ここに良いりんごがなるのに…」って囁かれたことがあった(笑)。
上田 パツッと切らねばならないときは切ります。でも、そんなにバツバツ切ったら、木も疲れるんじゃないかって…、思うこともあります。
佐藤 もしかすると、男性は女性よりも今あるものを大事にする気持ちがないのかもしれないなぁ。
上田 それが悪いということではなく、違いがあるなということですけどね。女性の働き手を増やしたいということであれば、ネックなのは畑にトイレがないことですね。あとは、託児の問題もクリアできたら、農業しやすいだろうなと思います。
長崎 お子さんがいると農業はなかなか難しいという女性が多いですね。託児についてはグループを作って面倒を見る、ということをしている事例もありますよ。
上田 働き手を増やすためには、何よりも私たちが楽しそうに農業をしている姿を見せることが大事だと思います。ツライツライって言ってしまったら、誰もやりたがりませんよね。

定休日がない、でもいつか作りたい。
鹿角りんごの新しい経営スタイルを目指す。

──果樹農業における夢を聞かせてください。
上野 僕の場合は子育ても一段落して、家も買って、現実的な夢っていうのはないんだけど、良いものを作り続けたいという気持ちはありますね。向上心がないとダメだと思っているから、若い人たちから刺激を受けることは良いことだと思ってる。
兎澤 休みがないことが当たり前だけど、できるだけ休みが取れる農業をすること。手をかけた分、良いものができるのはもちろんだけど、その辺りのバランスが取れて休日が作れる農業をやることが夢ですね。
佐藤 農業には定休日がないからね。
池田 自分のために休むという欲はないけど、今は子どもにしてやりたいことがある。今はそのために、曜日決めて夕方一緒に卓球をしたりしてますね。
上野 農家は忙しいときは忙しいけど、普通のサラリーマンよりも比較的子どもと一緒にいれる時間は作れるように思うんだけど。
佐藤 僕の場合は、両親を専従にして時間を決めて働いてもらっているから、基本全部自分でやってる。子どもも見てもらっているから、子どもとの時間を作るのは難しいんです。
中村 僕の夢は2つあります。1つは死ぬまでにお酒を作りたい。もう1つは、兎澤さんと一緒で、週休二日にしたい。僕を見てりんご農家になりたいと言ってもらうためには、企業のように休みもある農業を目標にしていかないと。そのために、経営とか技術を勉強しています。農業人口が減っている原因に、その部分も大いにあると思うんです。
上田 私も2つありますね。1つはベテランだけど高齢でなかなか作業がままならない方の畑に自分がバイトとして入って、働きながら勉強させてもらいたい。2つ目は、いつかりんごの専門店を開きたい。日本で一番鹿角りんごがおいしい…、ということは、それって世界一ってことじゃない? と個人的には思ってるから。それを紹介したいです。
佐藤 僕は今、子どもも小さいし、いろいろとやることがあって慌ただしい。なかなか畑にゆっくりいられないから、ゆっくり畑にいられるようになるのが待ち遠しいですね…。
上田 あ、もうひとつありました。無農薬でりんごって作れないのかなと。興味があるけど、無理だってよく言われるんです。
佐藤 作れるよ。無理じゃない。
上野 できることはできるだろうけど、売れるものができるかということだよね。
佐藤 昔、みかんを無農薬で作っている人がいて。その人は、みかんの他にもいろいろな種類の樹木を植えているんです。要するに、りんごだけをまとめて作ったら、病気になるという考え方。例えば、山の中に一本だけりんごを植えてみたら、病気になるのか、虫が付くのか。やってみると参考になるかも。
上野 虫や病気が付きにくい、台木の特性についての研究が進めば、そっちのアプローチのほうが早い気もするよね。
長崎 ハウス栽培をしてみるというのは、どうでしょう? 桃は雨よけハウス栽培があるので、りんごも仕立て方次第でできそうですね。
佐藤 どちらにしても、りんごは実がなるまでに時間がかかる。やりたいなら、早めに始めたほうがいいと思いますね。
──皆さんの知恵とか技術、情報を集結したら、新しい果樹農業が始められそうで、ワクワクしますね。本日は貴重なお話、ありがとうございました!

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