2020.05.18
種を蒔くだけは、
鹿角りんごにはならない。
「接ぐ(つぐ)」という技術が
大切に受け継がれている。
鹿角市にある「かづの果樹センター」で長年、果樹栽培の研究に取り組んでいる中村佐之さんにお話を伺った。
「りんごの種を土に蒔けば、一応、りんごは実ります。でも、自分が食べて種を取ったりんごにはならないんです」。
一般的に食べられているりんごは「台木」と呼ばれる苗に、育てたい品種の穂木を接ぎ木し育てた樹に実ったもの。台木はさまざまな種類があり、それぞれに特性、特徴を持っている。鹿角では寒さに強いもの、雪の害を受けにくい高さに育つもの、作業しやすい高さに育つものが選ばれる。
ちなみに、「高接ぎ」と呼ばれる技術は、大きくなった樹に新しい品種や系統の良いものを接ぐ技術で、早期の生産量確保や品種の更新に役立っている。1本の太い幹から、3種類のりんごが実る、そんな樹もあるのだ。
りんごの品種の特性と台木の特性をかけ合わせた苗木を畑に植える。果実が実ってから「ちょっと違ったか?」ということもあるという。それが、時には新品種の発見に繋がったりすることもある。
消費者が求めるりんごを生み出すためには接木という技術なくして実現はできない。「鹿角りんご人」の好奇心と探究心、そして愛がある限り、その技術は廃れることなく、鹿角りんごを支え続けていくだろう。