2020.05.01
「昔はうちも牛を飼ってたみたいなんすけどね、おじいちゃんの代でやめちゃった」、「昔はうちにも牛舎があったみたいなんだけど…」。
昔、牛たちは鹿角人たちの生活の中に当たり前のようにいた。そしていまは、天界の楽園にいる。わずか0.03%の奇跡の牛、かづの牛。鹿角に恋する「恋する鹿角新聞」としては、その奇跡に迫らない訳にはいかない。まずは下調べからだ。べごさんやーい。
かづの牛は短角牛。そもそも「日本短角種」は「南部牛」と外来種である「ショートホーン種」が掛け合わされたもの。北日本各地で改良が進められ、1957年に日本短角種として登録が一元化された。黒毛と短角の違いは、角の長さよりも足の太さや乳房の大きさにあるという。黒毛は南の牛であるのに対し、短角は皮も厚いし毛も厚く、夏に弱い。だから「夏山冬里方式」で、夏は涼しい高原の放牧地でゆったりと草を食んで育っている。
希少そうな雰囲気は十分伝わってくる。では数字はどうか。独立行政法人家畜改良センターが提供している「牛個体識別全国データベース」によれば、「和牛」と称することができる「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」の4種と、4種の交雑種の頭数は1,689,522頭(2019年5月末時点)。「黒毛和種」が約166万頭と大半を占めていて、日本短角種は8,199頭しかいない。そのうちの約500頭がかづの牛だ。0.03%の奇跡の牛というのはこういうことだったのだ。
かづの牛は「鹿角地域で生産された日本短角種」と定義され、日本食肉消費総合センターにもブランド牛のひとつとして登録されている。GI(地理的表示)保護制度への登録申請も行われた。与える飼料の基準は「育成期は自然放牧で粗飼料主体」。さらに自然交配で生まれ育つことも挙げられる。出荷までは産まれてから23ヶ月から32ヶ月。自然交配なので、産み月によって出荷がばらつくのも特徴。1年間の出荷頭数は約80頭、秋田県畜産農業協同組合鹿角支所(畜協)が中心になって、着実に増頭計画が進んでいるようだ。
というところまでは、調べた。手間ひまかけて愛情たっぷりに育てられているべごさんたちの顔を見てみたくなった。そのためのキーマンがいるという。畜協の実幸さんだ。